悲しい

情緒不安定になる原因と治し方を臨床心理士が解説

人それぞれ感情の起伏はあり、情緒不安定な状態にもさまざまな解釈があります。今回は情緒不安定の種類と原因、そして治すためにできることを臨床心理士が解説いたします。

情緒不安定の種類と原因

孤独

情緒不安定とは、心が不安定になり、感情の起伏が激しくなっている様子を指します。突然悲しくなったり、イライラしたり、突然寂しくなったりすることがあるのが情緒不安定のときに見られる状態です。このアップダウンの激しさの時期や程度により、情緒不安定の種類はおおきく2つに分けることができます。

情緒不安定の種類と原因①:身体機能面から生じる

誰でも情緒不安定になることがあり、そのよく見られるきっかけとしてはホルモンバランスが指摘されています。女性はカラダのバイオリズムに従って分泌されるホルモンの変化があります。

ホルモンバランスの変化により、イライラしやすくなったり、頭が働きにくくなったり、急に涙が出てくる、ということもよくあるのではないでしょうか。

情緒不安定はカラダからのサイン

また、このようなホルモンバランスの変化による精神面への影響は女性だけではありません。40代以降に起こる更年期は男性にも見られ、男性ホルモンの分泌量が減少していく中で不安感が高まることがあります。

そのため、情緒不安定な状態が生じたときはホルモンバランスの変化が起きているカラダからのサインである可能性もあります。

情緒不安定の種類と原因②: 精神疾患から生じる

自信がない

情緒不安定はあくまでも表面的な症状として現れる、精神疾患から生じる情緒不安定があります。隠れている疾患としては、うつ病をはじめとする気分障害、適応障害、PTSD、社会不安症などさまざまな疾患が考えられます。

境界性パーソナリティー障害の可能性を考える

その中でも特に日常生活に支障をきたすほどの情緒不安定な状態になるケースがあるのがパーソナリティー障害のひとつである境界性パーソナリティ障害です。

パーソナリティー障害とは、認知や感情、行動や対人関係のパターンが一般的な人とは著しく異なり、そこからさまざまな苦しみや社会活動の問題が生じている状態をいいます。なかでも境界性パーソナリティー障害は「見捨てられ不安」という感覚がとても強く、相手が自分を見捨てて離れていく、自分を大事にしてくれていないと感じてしまいます。すると、不安や怒りが急に強くなり、感情のコントロールがうまくできなくなってしまうことがあります。

思いやりのある人ほどかかりやすい

パーソナリティー障害の方は基本的に相手の気持ちを敏感に察することができます。そのため、相手のために頑張ったり、ときには必要以上に頑張りすぎるほど、思いやりのある行動をとったりすることが多いのです。

彼らは、「見捨てられ不安」が高まり激しい情緒不安定な状態へなったあと、一旦落ち着くと「なぜあんなことをしてしまったのか」と自分を責めてしまいます。一転して激しい自己嫌悪や落ち込みに陥るなど、さまざまな影響がみられます。

情緒不安定を治すためにできること

ハート

それでは実際に情緒不安定を治すためにできることをご紹介いたします。

情緒不安定を治すために①:感情を観察する

日本人には馴染みが深い「喜怒哀楽」という感情があります。まずこの4種類の感情をポジショニングマップ(ポジショニングマップについては検索していただくとわかりやすいと思います)に4方向に記入します。その図の中に自分の感情の位置をマッピングしていきます。

例えば普段のときの自分、友達といるときの自分、パートナーといるときの自分、家族といるときの自分、またときには月経前の自分などでもいいかもしれません。それぞれの場面での感情を観察してみましょう。マッピングされた感情があなたにとって親和性のある感情です。

マインドフルネスを上手に利用

それぞれの場面での自分がわかってきたら、今度は実際の場面に出会した時に、その感情が湧いてきたらぜひその感情を詳しく観察してみてください。このように感情を観察する行為自体に情緒不安定の波を鎮める効果があります。同様な効果が見込めるものにはマインドフルネスを日々の生活へ取り入れることも効果的です。マインドフルネスに関しては以下の記事で詳しく紹介しています。

自然
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情緒不安定を治すために②:医療機関への受診


長期間の情緒不安定な状態が続く場合は、一度医療機関への受診をおすすめします。ホルモンバランスが崩れている可能性があったり、ときには甲状腺の異常が情緒へ影響しているケースも少なくありません。日常生活へ支障のあるほどの情緒不安定が見られる場合も同様です。情緒不安定の原因を明確にしていくプロセスは、回復への大切な一歩となります。

情緒不安定を治すために③:心理カウンセリングを受ける


精神疾患が起因となる情緒不安定の場合、心理カウンセリングを受けることはひとつの選択肢です。とくに境界性パーソナリティー障害の方への有効性が確認されている「弁証的行動療法」という心理療法があります。

この心理療法は認知行動療法のひとつで、自分ではコントロールできない、激しく苦しい感情を抱えている人のために開発されました。一定期間のカウンセリングは必要となりますが、激しい感情の起伏を感じて苦しんでいらっしゃる方には有効な方法です。

情緒不安定の原因と治し方:まとめ

瞑想

情緒不安定な状態はさまざまな背景があります。まずは、自分の情緒不安定がどこから生まれているのかを知ることが大事です。原因を知れば対処行動へとつながりますから、是非ここで紹介したものから取り組んでみてくださいね。

この記事の著者

古山あかり
古山あかり Posted on

臨床心理士、公認心理師。東日本大震災の被災地や首都圏のスクールカウンセラーとして働き、司法関係や医療現場を経験。独立後、Hanacel合同会社を設立。個人セッションのほか、芸術・芸能関係のメンタルサポートも行なっている。