気が強く、ワガママで、自分勝手に振る舞ってしまう行動は、周囲から「自己中」と呼ばれたりします。このようなタイプの方は、本人よりも周囲の方が困り感を抱きやすい傾向があります。
しかし、「あなたは自分勝手だよね」「人の気持ち、理解できないよね」と言われると、やはりとても悲しい気持ちになりますよね。今回は自己中心的だと捉えられる方の特徴と、その治し方について解説します。
自己中心的とは

一般的に自己中心的な人だと周囲から捉えられている人は、本人が自覚せずに自分が全ての中心であるかのように物事を捉えたり、理解したり、周囲への配慮なく行動をする傾向があります。
その結果、周囲の人から「我が強いよね」「わがままだよね」「人の気持ちがわからない人」などと、とても否定的な意見が寄せられる機会が多いのが現実です。では、このような特徴は限られた一部の方だけが持っているものなのでしょうか。
誰もが自己中心的だった時代があった「自己中心性」とは

実は成長の過程で、誰もが一度は自己中心的だった時代を経験しているのです。
児童心理学者のピアジェは、発達理論を提唱する中で幼児期の子どもが持つ「自己中心性」という物事の捉え方をする心の状態がある、ということを説明しています。
これは、目の前にあるものに対して自分の立場からのみ、また目立つ部分にだけ注目をして、それ以外の部分を無視すること、とされています。ですがこの心の状態も成長に伴い、さまざまな立場から物事を見られるようになり(脱中心化)、客観的な物事の捉え方や、相手の立場に立つことができるようになっていきます。
自己中心性バイアス
大人になってからも自己中心的だと周囲から捉えられている方は、そのような傾向が強く残った「自己中心性バイアス」が物事の捉え方に影響を与えている可能性があります。自己中心性バイアスとは、自分だけが知っている情報だけで、他人の心の状態を捉えてしまう傾向を指します。
たとえば、以下のような考え方です。
- 夫婦の家事分担について、お互いの全ての行動を把握できていないのに「自分ばかりが頑張っている」と思い込んでしまう
- 「仲がいい相手なのだから、多少きついことを言ったとしても冗談として流すだろう」と思ってしまう
このような考えは、自己中心性バイアスが強く働いている可能性があります。
誰もが自己中心性バイアスは持っていますが、いき過ぎた物事の見方は、相手を傷つけるきっかけにもなってしまうでしょう。「相手の心の状態は相手しかわからない」という前提を持つことが脱・自己中への第一歩にもなります。
周囲との人間関係が難しいと感じる、自己愛性パーソナリティ障害とは

自己中心的である傾向が強いのはある意味、その人の個性のケースもあります。しかし、一定のレベルを超えると個性とは言い切れないケースもあるのでご注意ください。
自己中心的な考え方を持ちすぎると、他者を尊敬できずに軽んじている気持ちや自分への誇大評価によって、問題を起こしやすいのです。そのため、人間関係のトラブルを起こしたり、仕事面で失敗したりの経験が重なる傾向があります。
自己愛性パーソナリティ障害の特徴
このような強すぎる自己中心的な傾向には、自己愛性パーソナリティ障害が関係している可能性があります。
このパーソナリティ障害には、以下のようなことが起きやすいとされています。※
- □人の批判に耐えられない
- □自分の夢にとりつかれているように、周りの目には映る
- □自分は特別な人間だという気持ちが強い
- □共感性に乏しいと言われる
- □他人からの賞賛や特別扱いを常に望んでいる
- □人の気持ちを気にかけない、場の空気を読まない人間のように周りには見える
- □他人の何かに嫉妬すると同時に、他人は自分の何かを妬んでいるようにも見える
- □周りの人間を見下すような態度がかなりある
自己愛性パーソナリティ障害の原因はまだはっきりとわかってはいませんが、ひとつの要因として親が子供を適切に扱わなかった(過度に批判的、または過度に子どもを賞賛したり甘やかしたりすることによる、等)可能性を説明する理論もあります。
つまり、成長の過程で周囲からの賞賛を得なければ強い不安におそわれる。そんな体験からの影響があるとも言えます。
自己中心的な性格を直す4つの方法

自己中心的な傾向が強くなってしまう傾向にはさまざまな要因が考えられますが、実際に「治したい」と思ったときに心掛けていただきたいことをご紹介します。
自己中心的な性格を直す方法①:相手に興味をもつところから始める
自己中心性バイアスが強い傾向にある方は、自分からの視点を重要視してしまったり、自己愛性パーソナリティー傾向の方は、自分が賞賛を浴びることを優先してしまうため、目の前の人をどうしても置き去りにしてしまう傾向があります。
まずは、人と関わるときに「相手に興味を持つ」ということから始めてみましょう。話し合いのときには、自分の発言をするだけでなく、積極的に相手の考えを聞いてみたり、雑談の中で相手のことでまだ知らないことを質問してみるのもいいでしょう。
「興味がないから聞かない」のではなく、「相手のことを知ると興味が湧くかもしれない」と期待を持つことも大切です。
自己中心的な性格を直す方法②:相手のことを否定しない言葉を使う
他人と関わる中で、いつも意見や考え方が必ずしも一致するとは限りません。そんなときはどうしても真っ先に「違う!」「間違っている!」と否定したくなる気持ちが湧き上がってくるかもしれません。
ですが、まずは相手の意見を肯定する言葉を、一番最初に伝えましょう。
「あなたは○○という風に考えてるんですね、とてもいい考えですね!ちなみに、私はこんな風に考えたのですが、あなたはどう感じますか?」と言う風に、相手を肯定した上で自分の意見を伝えるだけで、円滑なコミュニケーションを取ることができるイメージが湧きませんか?
自己中心的な性格を直す方法③:相手に対する決めつけを一旦置いておく

②にもつながりますが、近しい人でも必ずしも同じ考えを持つ同じとは限りません。それは目の前で起こった出来事に対しても言えます。
「これに対しては〇〇と思う」という考えがあるのは、悪いことではありません。ですが、「これに対して〇〇とは誰もが思うものだ」という考えを持つのはとても危険です。
この仮説が間違っていると相手に対する関わり方や声かけが間違ってしまい、「自己中だ」と認識を持たれてしまう可能性があります。まずは「自分の認識と人の認識には違いがあるかもしれない」と仮説を持つことで、相手に質問を問いかけてみましょう。
自己中心的な性格を直す方法④:心理カウンセリングを受ける
実際、自己中心的だと言われて悩んでいる方の中には、自分のどのような行動が他人からみてそう見えているのかがわからず悩んでいる方もいらっしゃいます。
そのような方は、専門的な心理カウンセリングの利用がおすすめです。対人場面で起きた具体的なエピソードを話しながら、自己中心的だと捉えられてしまう部分を整理したり、どのように対処すればよいか考えていくと改善しやすいでしょう。
自己中心的への悩み:まとめ

自己中と言われて悩んでいるのなら、すでにあなたは自己中心的な傾向から脱出するための一歩を歩み始めています。いくつかの改善策を紹介しましたので、試しやすいものから始めてみてください。なお、この記事を執筆するにあたり以下の文献を参考にさせていただきました。
参考文献:高橋 三郎,大野 裕(監訳) DSM-IV 精神疾患の診断・統計マニュアル