自分で自分のことが嫌になる、自己嫌悪。今回は臨床心理士が“自己嫌悪セルフチェック”を紹介します。
自己嫌悪を完全に無くすのは困難

自己嫌悪は、自分自身に対する否定的な感情です。「自己嫌悪などないほうがいい」と思われるかもしれませんが、自己嫌悪と全く無縁になることも難しいでしょう。たとえば、以下のような自己嫌悪は誰にでも起こり得ます。
- 全く勉強せず挑んだテストがやはり不合格で、自己嫌悪を抱いた
- お酒を飲みすぎた翌日、酔いが覚めるに連れて自己嫌悪が襲って来た
- 恋人と喧嘩した後、「あれは言い過ぎだったかも」と自己嫌悪に陥った
- 今日こそ朝活する予定が起きたら正午で、一日中、自己嫌悪を引きずった
自己嫌悪感には、ちょっと軽めのものからどんより落ち込むものまであります。その幅の広さ・深さ・強さ、どのくらい長く続くか、どこまで影響が出るか……実に多様です。
自己嫌悪は悪循環しやすい
自己嫌悪感と似たような感情には、「後悔」「反省」「怒り」「諦め」「絶望感」「羞恥心」「劣等感」などがあると考えられます。いずれも嫌悪の対象そのものが自分自身であるため、自分以外へ否定的な感情を抱くときとはまた違った苦悩を伴います。
自己嫌悪が更なる自己嫌悪を生み出す悪循環に陥ったり、自分の人格否定をするようになったりすると、“自分の存在意義”を見出せなくなり抑うつを招く可能性もあります。
自己嫌悪を自己診断してみよう

自己嫌悪感は明確に数値化できるものでもありません。そこで、何かしらの改善やケアを必要とするかどうかは、「日常生活や人間関係への支障の有無・その程度」をおおまかな目安とします。
“誰しも自己嫌悪感を抱くことはある”という前提で、“あなたの自己嫌悪はどのくらい生活に支障をきたしているか(その恐れがあるか)”を自己診断してみましょう。
※ここでの「診断」は、医療機関で用いられる厳密な意味合いの「診断」ではありません。また、医療機関などで“自己嫌悪〇〇”といった診断名(病名)がつくこともありません。このチェックを通して自分の傾向を知り、その上で何らかの対策を見つけ、実践していくきっかけにしていただくことを目的としています。
自己嫌悪診断チェックリスト

- □自分の長所を5つ以上あげられない
- □「私なんて」「どうせ私は」と言ってしまいがちだ
- □自己嫌悪を感じた翌日もその感覚が残っている
- □毎日必ず何かしら自分に対してダメ出しをしている
- □寝る前に一人反省会をして暗い気持ちで眠りにつくことがある
- □身支度をする時や街中で鏡に映る自分を見るのが苦痛だ
- □テストで95点をとると喜びよりも5点の失点が悔しくて仕方ない
- □自分の周りの人は自分よりも楽しそうで幸せそうだ
- □ひとつの目標を達成しても「上には上がいる」と満足することができない
- □優秀な人がいると粗探しをしてしまう
診断結果
◆当てはまるのが3つ以下の方
日常生活や人間関係への支障はあまりないでしょう。自己嫌悪を感じる内容やタイミングによっては、「よし、頑張ろう!」とポジティブに方向づけることができているかもしれません。自己嫌悪の有効活用が上手なのでしょう。ただし、以下の方はこのままだとチェック項目が増えてしまう可能性があります。
- 睡眠の質があまりよくない
- 容姿に対するコンプレックスが大きい
- 理想が高く、何をしても常に不足感や焦燥感がある
あなた自身が“今できていること”に目を向けながら、“何がどう変わると今の自分よりもっと好きになれそうか”を考え、具体的な行動にうつしてみましょう。
◆4〜6つ当てはまる方
日常生活や人間関係に支障をきたす場面が時にあるかもしれません。小さな失敗を長く気に病んだり、他者との会話に気を遣いすぎて疲弊したりと、日常が何だか波乱に満ちているように感じることはありませんか。ふとわいた自己嫌悪感をきっかけに、物事をやや飛躍してネガティブに捉える傾向があると考えられます。
身近な人、もしくは臨床心理士・公認心理師など専門家に早めに話をして、最小限の自己嫌悪にとどめることをお勧めします。「自己嫌悪をやめる」というよりは、「自己嫌悪がわくような出来事に遭遇した自分を労う」「自分で自分に“つらかったね”“頑張ったよね”と言ってあげる」といったアプローチが良いでしょう。
◆7つ以上当てはまる方
日常生活や人間関係に何らかの支障が出ていませんか。苦しい中で、自己嫌悪なんて自己責任なのだから自分次第だ、とどんどん追い込んでいませんか。とくに、人間関係についてのケアを早めにする必要があるかもしれません。
- やってみたいことがあっても「どうせ私には無理」と思い消極的になってしまう
- 人から誘いを受けても「私なんかに声かけるはずがない」「裏があるに違いない」と疑心が拭えない
上記のように考えて、自分の殻にこもってしまったり、「人に相談しよう」「人を頼ろう」と考えられなくなったりする恐れもあります。
他者を蔑むようになったら要注意!
自分を好意的に捉えることができないときは、どうしても他者を蔑みがちです。周囲の他者を蔑むことで、自分の立ち位置をどうにか維持しようとしてしまうからです。
しかし、他者の“悪いところ・嫌なところ・劣っているところ”にばかり意識を向けていては、良好な人間関係は築きにくいでしょう。
良好な人間関係が築けないと、「どうせ私は誰からも愛されない」「誰も私を評価してくれない」と新たな自己嫌悪・自己否定感を生み出してしまいます。心身の不調を来す恐れさえあるのでご注意ください。
「自己嫌悪セルフチェックをしたら点数が高かった。どうにかしたいです。」という相談の仕方でOKです。臨床心理士のいるカウンセリングルームを頼ってみて欲しいと思います。
自分自身をそのまま受け入れることが大切

自己嫌悪感は、青年期(おおよそ中学生〜大学生頃)に最も高まるという見解があります。青年期は「自分とは何者か」と思い悩んだり、進学や就職を機に自己分析したりと、とくに“自分・自己”に意識を向ける時期だからでしょう。このような取り組みの中で、自分の不出来なところ不甲斐なさ、他者と比較して劣っている点などに気づき、自己嫌悪感を抱きやすくなると考えられます。
この見解に沿えば、青年期の後(おおよそ20代半ば〜)も自己嫌悪が強い方は「自分とは何者か」と問い続けています。問い続けているため、ありのままの自分を受け入れるのが難しいのです。
なるべくありのままの自分を受け入れられるように意識してみてください。ありのままの自分を受け入れられれば、下記のようにもっと自分を角的で柔軟に捉えることができるようになります。
- 自分の不出来なところも認めた上で、自分の良さもたくさん知っている
- 自分を不甲斐なく思うこともあるが、そこから自分で立ち直る力もある
- 他者と比べて落ち込んでも、自分が更なる努力をする気づきへと変えられる
自己嫌悪を自己診断:まとめ

自己嫌悪を感じる場面はこの先もあるでしょう。大事なのは、自己嫌悪と折り合いをつけてうまく付き合えるようになることです。そうすれば「自己嫌悪なんて怖くない!」と感じられるようになります。