「学校に行きたくない 」「仕事だと思うと憂鬱になる」このような考えを過去や現在に一度は感じたこともあるでしょう。
適応障害とは、これらの考えの延長線上にある誰でもなるかもしれない病気です。この記事では、心の専門家である臨床心理士が適応障害になりやすい人の特徴や適応障害の予防・改善方法を解説します。
適応障害になりやすい人の特徴

あなたは真面目過ぎる、頑張りすぎていると言われたことはありますか?
「過ぎる人」や物事の取り組み方が過剰な人は適応障害になりやすいです。ほかにも、周りから見たら「いい人」と評価されても「そんなことはない」と自己評価して努力をし続ける人も適応障害になりやすいでしょう。
ただし、「過ぎる人」のなかでも特に適応障害になりやすい人には、以下の特徴があるのでチェックしてみてください。
- ストレス耐性が弱い
- ストレスの発散方法がない
- オンオフが得意ではない(切り替えが苦手)
- 周りの目が気になる
- 相談相手が少ないまたはいない
適応障害の原因

適応障害とは、ストレス因の病気です。ICD-10(国際疾病分類)によると、ある状況・出来事に対して苦痛を感じ、気分の落ち込みや身体・行動面などの変化から社会的行動を阻害されている状態のこと。
例えば、学校や職場に行くことが嫌だと感じる、仕事の前に不安になるなど、特定の場所において著しく障害のある状態です。ストレス因なので、環境調整や思考の整理・修正が必要になります。
では、具体的に適応障害にはどんな症状や特徴があるのでしょうか?適応障害の大きな特徴は学校や職場、家庭へのストレスという「原因が明確」であること。
ストレスとなる出来事があってから3か月以内には発症し、環境改善がみられると症状は軽減していきます。その症状は、情緒・身体・行動にわけてみると分かりやすいでしょう。
- 情緒面(気分):不安や抑うつ気分、怒り、焦り、集中力の低下など
- 身体面:動悸、発汗、めまい、手足の震え、吐き気など
- 行動面:暴飲暴食または食欲不振、過度な飲酒、攻撃的言動など
これらの症状は大人だけのものではありません。小学生や中学生の子どもでも適応障害になる可能性はあります。また、上記の症状のほかに、不安や抑うつ状態による不眠や赤ちゃん返り(指しゃぶりや赤ちゃん言葉など)も適応障害の一つと言われています。
ストレスをため込ないことが大切

適応障害にならないためには、ストレス発散が大切です。適応障害になりやすい人もしくはなっている人は、ストレス因から離れられる帰宅後や休日などは気分や調子は比較的良いことが多いです。これ以上悪化させないためには、自分の楽しい時間を大切にすることやストレス発散方法を知ることがとても重要。
また、適応障害が長引くことで持続的な抑うつ状態や興味関心の喪失、食欲低下、不眠などが発症しそれらが2週間以上続くことで、うつ病と診断されます。
ほかにも動悸やめまいを主症状とするパニック障害になることも。適応障害を予防することは、うつ病やパニック障害の予防にも繋がるのです。それでは、具体的にストレスをためない方法を見ていきましょう。
コーピングリストをつくろう
心理学では「ストレスコーピング(ストレス対処法)」が活用されています。ストレス耐性の強い人は、コーピング(対処法)をいくつも持っていると言われているのです。そこでおすすめは、ストレス対処のリスト「コーピングリスト」を作ること。
ストレス発散ができるような物や言葉、活動などをたくさん書きます。例えば、昼寝、コーヒーを飲む、カラオケに行く、ライブ映像を見るなど。ストレスの発散は人それぞれなので、思うがまま書いて実行してみましょう。
マインドフルネスを生活に取り入れる
マインドフルネスとは「今、ここ」に意識を向け、「良い・悪い」を評価せず、ありのままを受け入れる状態のことです。誰にでも落ち込むことはありますが、適応障害になりやすい人はネガティブな側面に思考が向かいやすいです。マインドフルネスは不安を和らげたり、免疫力を高めたり、集中力を向上させる効果があります。
座禅のような瞑想のイメージが大きいですが、それ以外にもあります。例えば、掃除や料理などの今行っている動作に集中しているとき。ほかにもジャーナリング(書く瞑想)など、頭に浮かんだ感情を評価せずに書き出すこともマインドフルネスです。

適応障害を改善する3つの方法

実際に適応障害になったらどうしたらいいでしょうか?悪化しないためにも、早めの対処が必要であることは間違いないです。この項目では、3つの方法を解説します。
適応障害を改善する方法①:ストレス因・原因から離れる(環境調整)
女優の深田恭子さんは適応障害を公表し、休業していました。このように、原因となる環境から離れることは適応障害を改善するために必要なことです。
カウンセリングに訪れる人の中には「仕事を休めない・辞められない」とおっしゃる人もいます。適応障害になりやすい人の特徴にある、周りの評価が気になることが原因の一つでしょう。
本来は原因そのものから離れることが必要です。しかし、部署異動や勤務時間の変更、座席を変える、原因となる仕事内容から離れるという方法で緩和できる場合もあります。
適応障害を改善する方法②:カウンセリングを受ける
環境調整がまず大事ですが、考え方や捉え方を変えることも長期的な対処法として必要です。再び似たような環境になった時に、困ってしまうのは嫌ですよね?
今のうちに、ストレスに強くなる物事の捉え方を身に着けることも改善のために必要です。心の専門家によるカウンセリング・心理療法の利用も検討してみてください。
適応障害を改善する方法③:対症療法として薬物治療を行う
うつ病やパニック障害になっていない適応障害の場合は、原則薬物治療は実施されません。ただし、不眠や食欲不振など身体面、著しい抑うつ状態があり、うつ病の診断まではつけられない状態なら薬物治療を実施します。早いうちに治療を開始することで、薬物治療期間も短くなる場合もありますよ。
ひとりひとり『合う環境』は違って良い

今回は、適応障害になりやすい人の特徴や予防・改善方法を解説しました。なかには「そんなことはわかっている」という人もいるでしょう。そのくらい当たり前のことが大切なのです。だからこそ、適応障害は誰にでもなる可能性のある病気。
ひとりひとり、相性の合う人が違うように、環境も合う・合わないがあって当然です。あなたのストレスが少しでも緩和し、過ごしやすくなることを願っています。