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パニック障害とは?初期症状やきっかけは何?

「突然呼吸ができなくなり、『死ぬんじゃないか』と不安になった」「万が一、電車の中で発作が起きたら、と思うと怖くて電車に乗れない」。

このような症状に悩んでいる方は、パニック障害の可能性が高いです。この記事ではパニック障害の症状から治療法まで詳しく解説します。

パニック障害とは?

悩み

パニック障害は、精神疾患の1つです。

全人口の約1~3%、つまり100人に1~3人がパニック障害にかかると言われており、けっして珍しい病気ではありません。

パニック障害の初期症状

パニック障害の初期症状が『パニック発作』です。

精神疾患の診断基準を示すDSM-Ⅴによると、パニック発作は突如として激しい恐怖または強烈な不快感が高まるところから始まります。恐怖や不快感は数分でピークに達し、以下のような症状が起こります。

  • 動悸が激しくなる、あるいは心臓がドキドキするのを感じる
  • 汗をかく
  • 身震いする
  • 息苦しさを感じる、あるいは息切れ感がある
  • 息ができず窒息しそうな感じがする
  • 胸が痛む、あるいは胸に不快感を覚える
  • 吐き気やお腹の気持ち悪さを感じる
  • めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じがする
  • 悪寒やのぼせを感じる
  • 身体がしびれた感じやうずく感じがある
  • まるで現実でない感じや自分でない感じがする
  • 自分をコントロールできずに「どうにかなってしまうのではないか」と怖くなる
  • 死ぬことに対する恐怖を抱く

これらの症状のうちの4つ以上に該当すれば、パニック発作と定義できます。

パニック発作後からパニック障害になるまで

診断

1回パニック発作が起きただけでは、パニック障害とは診断されません。ここでは初めてパニック発作が起きてから、パニック障害となるまでの流れをご説明します。

パニック発作

パニック障害と診断されるパニック発作には2つの条件があります。

  1. 繰り返される:2回以上のパニック発作を経験している
  2. 予期しないパニック発作である:明確な原因やきっかけがないのにパニック発作が起こる

この2つの条件を満たしていると、パニック障害と診断される可能性があります。

また、パニック発作は、通勤電車の中や寝ているときなど時間や場所を問わず発生する可能性があります。

予期不安

予期しないパニック発作が繰り返し起こると、パニック発作が起こっていない時でも「またパニック発作が起こるんじゃないか」「次に発作が起きたら本当に死んでしまうのではないか」と不安になります。このような不安を『予期不安』と呼びます。

広場恐怖

予期不安が強くなると、以下のように感じる場所自体を避けるようになります。

  • パニック発作が起きたら助けを呼べない(高速道路や長いトンネルなど)
  • パニック発作が起きたら逃げられない(バスや電車など)
  • パニック発作が起きたら恥ずかしい(美容院や映画館など)

これを『広場恐怖』といいます。広場恐怖が重度になると思うように外出できません。仕事や日常生活、人間関係などにも支障をきたすようになります。

DSM-Ⅴでは予期不安か広場恐怖の症状のどちらか、あるいは両方が1ヶ月以上続いていることがパニック障害の診断基準です。

パニック障害のきっかけ

自分の命が脅威に晒されたとき、私たちは闘争・逃走反応を起こします。闘争・逃走反応とは交感神経が優位になり、鼓動や呼吸が早くなることで、『脅威と闘う』あるいは『脅威から逃げる』ための心身の準備が行われることです。

本来、闘争・逃走反応は脅威を前にした時に起こります。しかし、パニック発作は脅威が何もないのに起きてしまうのです。 パニック発作が起きるときは、闘う対象も逃げるべき脅威もありません。だから、何と向き合えばいいのかも分かりません。

すると、パニック発作が起こること自体を避けようとしてします。その結果、予期不安や広場恐怖が生じ、パニック障害となるのです。

パニック障害の治療法

ハート

パニック障害の治療法には、主に「認知行動療法」と「薬物療法」の2つがあります。

①:認知行動療法

パニック障害は「またパニック発作が起こるのではないか」という【認知(考え)】が浮かぶと、不安や恐怖といった【感情】が生じます。

不安や恐怖が鼓動を早めるなどの【身体反応】を引き起こし、その影響でさらに「パニック発作が起こるかも」という【認知】が強固になり……という悪循環に陥った結果だと考えられているのです。(図1)

パニック障害

図 1 パニック障害の悪循環

認知行動療法では【認知】や【感情】との付き合い方や【身体反応】が起きた時のリラックス法を学ぶことで、パニック障害の症状を軽減していきます。

②:薬物療法

薬の力を借りながらパニック発作や予期不安を軽減する『薬物療法』もパニック障害の治療として効果的。パニック障害の治療では、以下の薬を併用するのが一般的です。

  • 抗うつ薬:SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)
  • 抗不安薬:ベンゾジアゼピン系抗不安薬

これらの薬は人によって適した量が異なります。そのため、自分の身体に合う量に調整できるまでは、眠気やめまいなどの副作用が生じる場合があります。

「副作用がつらいから」「症状が良くなってきたから」と自己判断で服薬を中断すると、めまいや吐き気などパニック発作に似た離脱症状が起こり、かえってパニック障害を悪化させる危険性があるので注意してください。服薬に関して気になることがあれば必ず医師と相談するようにしましょう。

パニック障害の初期症状:まとめ

自信がない

パニック障害は、3つの症状で構成されています。

  1. パニック発作:突如として激しい不安や恐怖と共に不快な身体症状が起こる
  2. 予期不安:「またパニック発作が起こるのではないか」という不安を抱く
  3. 広場恐怖:パニック発作が起こると支障をきたす場所を怖がり、避ける

パニック障害の治療では「認知行動療法」と「薬物療法」が行われます。

適切な治療を受ければ改善する症状ですから、「突然呼吸ができなくなった」「発作が怖くて電車に乗れなくなった」などのお悩みを抱えている方は、ぜひ医療機関を受診してみてください。

なおこの記事を執筆する際に、以下の資料を参考にさせていただきました。

この記事の著者

佐藤セイ
佐藤セイ Posted on

臨床心理士、公認心理師。精神科・児童相談所・療育施設・刑事施設などで臨床経験を重ねてきた。現在はスクールカウンセラーや非常勤講師として勤務しながらライター活動にも取り組んでいる。
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