「すべての悩みは対人関係の悩みである」
数年前に日本で大流行したアドラー心理学について書かれた『嫌われる勇気』に書かれている有名な一節です。人間は社会動物なので、人と関わることなく生きていくというのはあまりにも難しいことです。
ですが、人間関係に疲れてしまうときはどんな方でも経験があるのではないでしょうか。今回は人間関係に疲れてしまったときの対処法を臨床心理士が紹介します。
絶え間ない人間関係に疲れる

誰かと一緒にいるときはもちろん楽しくて、心が満たされる、気分がリフレッシュする面では人間関係を持つことは精神面でもとてもプラスにもあります。しかし一方では、気を遣いすぎたり、相手への誤った理解からストレスを感じたりすることもあるでしょう。
実は、人類の長い歴史を振り返っても、こんなに密接な人間関係があった時期はないのではないかというくらい、現代人は人間関係から離れる時間がとても短いのです。
学校や仕事へ行けば現実社会での人間関係があり、家に帰ってホッと一息したと思ってもメールやLINE、そしてSNSで友達や知人の存在を常に感じる感覚を抱いていないでしょうか。
人間関係に疲れてしまいやすい人の傾向

さて、以下のような傾向を持っている方は人間関係に疲れやすいと考えられます。
- 周りに必要以上に気を遣い、発言や行動に対して消極的で我慢することが多い
- 発言や行動をしようとする際、「こうしたらあの人にこう思われているのではないか?」とネガティブな方向に推測することが多い
- 相手の言葉の裏を探ることが多く、ストレートに受け取ることができない
- 相手の気持ちを「きっと〇〇と思っているに違いない」と判断することが多い
- 特定の人に対するストレスを、陰口や悪口によって解消している
このように過剰に気を遣ったり、相手の気持ちを悪い方向に推測したり、自分の思いを素直に伝えられなかったりする人は人間関係にストレスを感じやすく、疲れることが多いと考えられます。
人間関係に疲れたときの具体的な対処法

では人間関係に疲れてしまったとき、さらに人間関係に疲れてしまいやすい方は具体的にどのような対処行動をとればよいのでしょうか。
人間関係に疲れた時の対処法①:スマートフォンからSNSのアプリを削除
まずは適切な人間関係の距離を作ることが大切です。そのためには、まず家に帰ったら人間関係をある程度遮断できる時間をつくるために、SNSから距離を置いてみましょう。
スマートフォンにアプリが入っているとどうしても簡単にアクセスできてしまうため、ついつい見てしまう、そして延々と見てしまう、ということが生じやすくなります。まずはSNSから距離を置くことから始めましょう。
人間関係に疲れた時の対処法②:とっさに言える「言い訳」を考えておく

今日は一人でぼーっとしたい、というときに急遽誘いを受けて思わず承諾してしまい後悔してしまった。そんな経験をだれもが持っているのではないでしょうか。その時はとっさに言える「言い訳」を事前に用意しておくことをおすすめします。
たとえば、「週末新しいことを始めたんだ」「趣味を見つけようと思って〇〇を習い始めたんだ」と、さりげない日常会話の中に織り交ぜておくのもいいかもしれません。いざ誘われたときに、作っておいた文脈が生きてくるため、「その日は〇〇があるんだ」と伝えることができます。
嘘をつくことに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、大切なことは「人を傷つけない、自分を守る嘘というものがある」ということ、それは悪いことではないということを覚えておくことも重要です。
人間関係に疲れた時の対処法③:孤独感を無理矢理埋めようとしない

ここからは少し人間関係に疲れやすい方向けの内容になるかもしれません。これはとても逆説的なお話しなのですが、人間関係に疲れやすい方は、その疲れを親密な人間関係で埋めようとしたりするケースが見られます。
とくに人間関係の中でなんだか馴染めない、その場にいることで疲れてしまった、という感覚を抱くと、その寂しさや孤独感を無理矢理埋めようとすることで、よりいっそう孤独感を募らせることとなります。本来、孤独感は自分の内面を豊かにさせるとても大切な感覚です。
ですが、人間関係で疲れてしまいやすい方は、実は自分自身と過ごすことも苦手だと感じる方もいらっしゃいます。孤独を感じるときこそ、自分が楽しいと感じるものを探してみたり、新しいことを始めてみたり、時にはたくさん睡眠をとって休む時間を作ってみることが、人間関係の新しい活力となります。
人間関係に疲れた時の対処法④:いろんな深さの人間関係を作ってみる

人間関係に疲れやすい傾向のある方の多くは「全員から好かれなくてはいけない」「全員と仲良くしなくてはいけない」「愛される自分でいなければいけない」という思い込みを抱いている方が少なくありません。濃厚で深い人間関係を築こうと頑張ってしまう方が多いのです。
そのような傾向がある方への対処法は「浅い人間関係もある」と知ること、またそのような関係を築いてみることです。
「そんなのは人間関係と言えない!」と聞こえてきそうですが、本音で話さなくてもいい距離感や人間関係も存在します。人間関係を築くなら必ずしっかりとした関係を築かなければいけない呪縛に囚われることなく、適度な距離感を保てる人間関係を作ってみることが、疲れにくさを育むことに繋がります。
人間関係に疲れたときへの対処法:まとめ

一生の悩みのテーマである人間関係。労り方を知りつつ、疲れやすさを軽減させる方法も取り入れることを試してみてくださいね。なお、この記事を執筆する際に以下の文献を参考にしました。
岸見一郎, 古賀史健 (2013). 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え ダイヤモンド社