家族

家族関係が悪いときの対処法を臨床心理士が解説

  • 「親が過干渉で辛い」
  • 「夫婦で意見が合わずすぐに衝突してしまう」
  • 「思春期の子どもとの折り合いが悪く顔を合わすとすぐに喧嘩になってしまう」

このような悩みはカウンセリングにいらっしゃる方の多くがお話されますが、ほとんどの場合、『友達や近しい人には言えない』と一人で抱えていらっしゃる印象を持っています。

日々接する家族との関係は、私たちの精神状態に大きく影響を与えているでしょう。家族との関係が悪いと友達関係や周囲との人間関係、仕事でのパフォーマンスなどに影響が及ぶケースも少なくもありません。今回は心の専門家である臨床心理士が家族との関係が悪いときの対処法を関係別に解説していきます。

夫婦関係が悪いときは「異文化交流の感覚」を持つ

喧嘩

夫婦関係で忘れてはいけないのは、夫婦は全く違う環境で育った二人が一緒になるところから始まる、ということです。

人の価値観や考え方は、それぞれが育った家庭環境や周囲の環境によって大きく左右されます。そのため、価値観や考え方を共有せずに一緒に生活をしていると、すれ違いの原因になってしまうことも。

とくに家族で協力しなければいけない子育てや教育の場面、それぞれの実家の問題などでは、夫婦間での衝突が増える可能性は高いです。しかも、すれ違いが起きている夫婦間では、残念ながら「こうしたらわかってくれるかも」というような遠回しな表現では伝わりません。

イメージは異文化交流

このように夫婦間の衝突やすれ違いが増えてきたら、試していただきたいのが異文化交流をするようなイメージで、まずは自分から関わってみること

少し想像してみてください。海外にルーツを持つ人と初めて交流するときに「察してもらう」コミュニケーションをするでしょうか?おそらく、頑張って言葉で伝えようとするでしょう。ときには、ボディランゲージも交えるかもしれません。

夫婦も元々は異なる家庭文化の中で育っています。異文化交流をするくらいの気持ちで、自分の考えとそれに伴う感情を伝える努力から始めてみましょう。

あなたが子ども側のときの親子関係

発芽

親子関係は幼少期の頃はもちろん大人になっても、悩む方が多くいらっしゃいます。社会人になっても親からの言葉や干渉に振り回されている方も多いです。深刻なケースでは結婚後の夫婦関係や家族のことにまで親に干渉されてしまいます。その結果、自分たちで築いた家族が親に揺さぶられてしまいます。

このような場合に試していただきたいのが、「境界線を作る」ということです。子どもが小さい頃、親は子どもを自分の一部かのように心配したり、ときには自分が「こうしてあげたい」「こうなってほしい」という思いで接してきました。

しかし、大人になったあなたはもう、自分の人生を自分で決められるようになっています。そこで試していただきたいことは、親に対して「境界線」、つまり「あなたはあなた、わたしはわたし」という境目を作っていく、作業です。

親があなたの家庭に干渉しようとするときは

子ども夫婦が築いた家族にも親が干渉をしようとする場合には、家族のルールを伝えることも大切です。

たとえば、親からの言葉に対してはっきりと「あなたの言いたいことはわかった。けれど、私はこう考えているからこうします」と伝えることです。

親があなたの家庭に頻繁に干渉してくる場合は「我が家はこういうルールを作っています」と。親があなたを頼りすぎている場合は「今はそれぞれに家庭があるから、まずは自分たちそれぞれの家庭のことを大切にしよう」と伝えていきましょう。

過干渉な親に対してはっきりと物事を伝えることに躊躇してしまうかもしれません。しかし、親も子どもから距離を取られることで、ようやく自分自身の課題に取り組めるようになることもあります。子どもからの言葉で、やっと自分を大切にできる親もいます。勇気を持って、はっきりと伝えることが大切です。

あなたが親側の親子関係

男女

「こんなに心配しているのに伝わらない」「何回言っても同じことを繰り返す」と、子どもとの関わりで疲れ果てている親御さんのお話は、カウンセリングの中で本当にたくさん語られます。

とくに大きいのは子育ての比較です。同世代の子どもがいる親同士の会話から、自分の子どもと他人の子どもを比較してしまいやすいのでしょう。

しかしほとんどの場合で、どの親御さんも周りにはいいことしか話しません。それでも、他の親御さんからいいことばかり聞いてしまうと、自分の子育てに自信を持てなくなってしまう方も多いようです。すると、自分の子どもに対してより熱心に「〜しなさい」と働きかけをしてしまいます。このようなやりとりが続くと、子どもの自立心が芽生え始めたタイミングで衝突が始まります。

子どもの自立心を尊重

このような場合に試していただきたいのは「子どもに任せる」作業です。まだ生まれたての新生児であれば話は別ですが、だんだんとできることが増えてきたなと感じたら、少しずつ子どもの自立心を尊重すること。わかりやすくいうと「大人扱いをする」ということです。

子どもは大人扱いをされることで、自分で決めたことを自主的に守ろうという気持ちが育ってきます。

もちろん「子どもが失敗してしまうかもしれない」という不安も湧き上がるかもしれません。しかし、その失敗も子どもにとっては必要です。

あなたとあなたの子ども関係が悪いと感じた時には、まず「大人として」現状をどのように感じているか、子どもに尋ねてみてください。「大人として」の意見を子どもに聞くのも1つの手です。このようなコミュニケーションを重ねていくと、親子関係が改善していく道のりが見えてきます。

家庭関係の改善:まとめ

風船

「家族間がうまくいっていない」と感じるのなら、ぜひここで紹介した方法を試してみてください。もしも、家族だけでは会話がヒートアップしてうまくいかないのなら、カウンセラーなどの第三者を交えるのも1つの手です。できることから試してみてくださいね。

この記事の著者

古山あかり
古山あかり Posted on

臨床心理士、公認心理師。東日本大震災の被災地や首都圏のスクールカウンセラーとして働き、司法関係や医療現場を経験。独立後、Hanacel合同会社を設立。個人セッションのほか、芸術・芸能関係のメンタルサポートも行なっている。