- 「自分にも人にもどうして妥協ができないんだろう」
- 「なんでも限界までやらないといけない気がする」
- 「完璧主義は辛いけど、やめ方がわからない……」
『完璧主義』そのものは、精神医学の中では病名ではありません。ですが、精神疾患の症状のひとつとして挙げられたり、その状態に苦しんでいたりする方は少なくありません。
この記事では「完璧主義でいることが辛くてやめたい」と感じる方のヒントになる自己診断や、完璧主義とうまく付き合う方法をご紹介します。
私は完璧主義?セルフチェックをしてみよう

まずは自分が完璧主義かどうかをセルフチェックしてみましょう。
- □責任感が強い
- □何事も100%の出来を求めてしまう
- □細かいことが気になってしまう
- □周りから有能な人と思われていたい
- □失敗したり、ひとつでも気がかりなことがあると反省時間が長い
- □他人から指摘されることが嫌い
- □集団のルールや自分が決めたルールを守らないと気が済まない
- □何事も満足度が低い
- □作業に取り掛かるまで時間がかかる
- □小さなミスでも見つけると全て改善しようとする
- □物事を0か100で考えてしまう
当てはまる項目が多いほど、完璧主義の傾向が強いと考えられます。では、この完璧主義は、どのような物事の認識からくるのでしょうか。
完璧主義の苦しみを生む認知の歪みとは

完璧主義の方の多くは、自分の成功を望んでいます。しかし同時に、失敗することが怖かったり不安であったりするため、失敗を避けることに最もエネルギーを注いでいることが多いのです。
この失敗への過剰な恐怖心や漠然とした不安感は、どのようにして生じてくるものなのでしょうか。
「失敗したくない」……このような感情を生み出してしまう原因として、心理学では『10種類の認知の歪み』が知られています。認知とは物事を認識・理解し、それに対して判断や解釈を行うことです。認知行動療法の中では『自動思考』とも呼ばれています。
10種類の認知の歪みについて以下の表にまとめています。
認知の歪み10種類
全か無か思考 | 物事を見るときに、「白か黒か」「0か100か」という両極端の見方をすること。 |
過剰な一般化 | ひとつでも良くない出来事があると,「いつも決まってこうだ」「うまくいったためしがない」などと思い込むこと。 |
心のフィルター | 良い部分がたくさんあっても、ひとつだけでも良くないことが目に入ると、他のことはすべて無視すること。 |
マイナス思考 | いいことを無視するだけでなく、どんなことでも物事を悪い方に考えること。 |
結論の飛躍 | なんの根拠もないのに、悲観的な結論を出すこと。 |
感情に基づいた判断 | 客観的な根拠はないが、自分の感情が現実を反映していると思い、悪い予感がすればそれが的中すると考えること。 |
誇大視と過小評価 | 失敗したことやミスを過大にとらえて、うまく行ったことを過小評価する。 |
すべき思考 | 何かをするときや、理解するときに「~であるべき」「~するべき」のように理想像が必ず存在すると考えること。 |
レッテル貼り | ほんの小さな失敗でも「自分はダメ人間だ」と、すぐさま自分にレッテルを貼ること。 |
自己関連づけ | 何か良くないことが起こったとき、自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまうこと。 |
この中で、とくに大きな影響を与えがちなのは『全か無か思考』『マイナス思考』『すべき思考』です。このような思考パターンがあなたにあると、完璧にできないことへのストレスが溜まってしまうでしょう。へとへとに疲れてしまったり、他人に対して厳しく接してしまったりと、人間関係に影響が生じることもあります。
完璧主義とうまく付き合うための3つの工夫

「細かいことなんて無視していいよ!」「完璧じゃなくても大丈夫だよ」と言われても簡単にできたら悩まないですよね。ですが、完璧主義とうまく付き合うための工夫を意識していくだけでも、効果はあります。ここでは試してみたくなる工夫を3つご紹介します。
①『完璧』ではなく『完了』をゴールに設定する
完璧主義の方は、『完璧に全てを終わらせる』をゴールにするケースがよくみられます。今まで『完璧に全てを終わらせる』をゴールにしてきた方は、『完了』をゴールに設定してみてください。
そのためには、物事を始める前に『完璧の完了』と『完了』の両方をイメージすることです。すると、両者の違いに気づけるケースも少なくありません。もし、『完璧の完了』と『完了』の両方をイメージして、イメージが異なっていたら……まずは『完了』を目指すのです。
ときには『完了』のイメージが持てないこともあるでしょう。そのときは、周りの人に意見を求めてみるのもひとつの方法です。
②自分の完璧主義のパターンを見つける
完璧主義の方には、それぞれ「どうしても譲れない」と感じる部分があります。では、あなたのどうしても譲れない箇所はどこなのでしょうか?
そのポイントやパターンを見つけ出すために、日記をつけるのもひとつの方法です。作業の手が止まってしまう時や、自分や周囲の人にイライラしてしまうタイミングがあったら、そこが観察ポイントです。
日記の付け方
日記には、今の状況・出来事に対して「どういう考えが浮かんだか」を書き出していきます。先述した『10種類の認知の歪み』をヒントに、自分の考えを素直に書き出すと良いでしょう。
日記を続けていけば、あなたの完璧主義が刺激されるタイミングや思考パターンが見つけやすくなります。完璧主義が刺激されるタイミングや思考パターンがわかれば、「本当にその考えは譲れないのか」と検討できるでしょう。
この方法のメリットは、これまで漠然としていたあなたの完璧主義の詳細が見えてくることです。詳細が見えれば、より正面から向き合いやすくなります。
③作業量ではなく時間で区切る
①の『完璧』ではなく『完了』の話にも通じる話ですが……完璧主義の人は、他人と共同で作業をするときに支障が出るケースが目立ってしまいます。
他人の成果のクオリティが気に入らなかったり、完璧を求めるあまりあなただけが他の人よりも時間を使ってしまったり……といった具合です。
共同作業が原因で人間関係を悪化させたくはないでしょう? それなら、『時間を意識した作業』という視点を持つと良いです。
- 作業を開始する前に、どの程度時間がかかりそうかを予想してみる
- 作業時間を一定にする。必ず細かく休憩を入れて(たとえば1時間作業をしたら5分休憩する)、冷静になるタイミングをつくる
- 終わらなかったものは、翌日に持ち越すことを徹底する
これらを繰り返していくと、あなたにとっての『譲れないところ』と『頑張れば妥協できるところ』が見えてきます。物事の優先順位を考える力が鍛えられるからです。また、疲れを持ち越して翌日のパフォーマンスを低下させたり、イライラさせたりする原因を断つ効果も期待できます。
完璧主義をやめたい人へ:まとめ

自分の完璧主義とうまく付き合えるようになると、仕事や学業の効率がよくなるだけでなく、自分や周囲の人たちに寛容にもなれます。また、新しいことに挑戦したいと思ったときも、行動に移しやすくなるでしょう。
まずは、自分の完璧主義がどのようなものなのかを理解すること。その上で、取り入れられる工夫から試してみてください。