最近はエゴサーチなんて言葉もよく聞きますが、もしも家族や友人から「あなたはエゴが強い」と言われたら、嫌な気持ちになる人も多いのではないでしょうか。しかし「エゴって何?」の疑問に対して明確に答えられる人は少ないでしょう。実はエゴを知ることは、自分を知るに等しいのです。
「エゴ」をマイナス的な意味で使うことが多い

「エゴ」とは、英語の「ego」であり、コトバンク(ウェブ百科事典)には、次の3つの意味が書かれています。
- 1つ目は、他者と区別する自分自身のこと。
- 2つ目は、心理学者フロイトの用語。
- 3つ目は、自分本位の考え方や態度、又は、そういう人のことです。
この言葉のルーツは、ラテン語の「私」という意味の「ego」。つまり、「エゴ」とは、「自我」と同義語で、個人の意識・概念のことだと捉えることができます。
「エゴ」を個人の意識・概念と捉えるならば、エゴは人生にとって必要な要素であることに気づきます。何故なら、エゴがあるとは、自分らしさや自分の願望をもっていることでもあるからです。
しかし、私たちが「エゴ」という言葉を使ったり耳にしたりする時、「自分の利益だけ考えている」「他者を軽んじている」「我が儘」等、マイナスの印象も浮かびませんか。それは、何故でしょうか。「エゴ」の捉え方を考えること。そこには、あなたがあなたらしく生きられるヒントが詰まっています。
「エゴ」を認めることが大切
人は幼い頃、家庭や社会の中で「自分にとってより命が繋がるだろう生き方」を学習します。例えば、自分自身をそのまま表現することでうまくいくと、その生き方を採用するでしょう。逆に自分自身に蓋をすることでメリットを得ると、その生き方を採用します。人は経験を通して「エゴ」を育ててきたのです。
ここで、「エゴ」に関わる、作家や心理学者の言葉をご紹介します。
君が自分の趣味をちゃんと確立すれば、他のものを判定する尺度をもったことになり、ほかのものを過大でなく、正当に評価するようになるだろう。
(詩人 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)
僕に必要だったのは自分というものを確立するための時間であったんだ。
(作家 村上春樹)
心から自分を愛し、大切にしなさい。これは自己への偏愛ではありません。
(著述家 ジョゼフ・マ-フィ-)
自分に対して「最良の援助者」であれ。
(作家 サミュエル・スマイルズ)
幸せの三要素は、自分自身が好きかどうか。
よい人間関係を持っているかどうか。
そして、人や社会に貢献しているかどうか。
(心理学者 アルフレッド・アドラー)
自分との関係性、他者との関係性、自分の在り方への言葉。あなたはどのように感じましたか。そしてあなた自身は今、どのような「エゴ」で生きているのでしょうか。
現実にあぶり出されている自分の「エゴ」

心理学的に見ると、「エゴ」はその人の思考や言動に投影されると考えられています。例えば、ネットで自分の本名やハンドルネームを入力して検索し、他者からどう評価されているのかを探す「エゴサーチ(ego search)」という言葉があります。
エゴサーチをする時、その人は不安や怖れの状態であることが分かるのと言うのです。
「エゴサーチ」をする人の深層心理
本来、自分の価値は他者からの評価で増えたり減ったりするものではありません。又、ネット上の匿名で責任無く書かれたものに、そもそも何の信憑性も客観性もありません。それでも、人がエゴサーチをするのは何故でしょうか。
そこには自身に不安や怖れがあり、それを誰かに埋めてもらおうとしたり、既に不安である自分と辻褄が合う現実にする為にわざわざ不安を感じる情報を得ようとするからです。
他人の評価が気になる気持ちもわかりますが、他人からの評価がないと自分を認められないのだと苦しい人生を送ることになります。なぜなら他人の考えを操ることはできず、万人に好かれている人など存在しないからです。名声を得れば得るほど、批判する人も増えてきて、エゴサーチすることで自分を傷つけることなるのです。
あなたは他人が評価する人生を送りたいのでしょうか?それとも、自分自身が望む人生を送りたいのでしょうか?よく考えてみてください。そうすれば、自然とエゴサーチする意味も薄れてきます。
自分に安心感や自信を取り戻す

エゴサーチの例からわかるように、人は思考や言動を通して今の自分の状態に気づけます。気づくからこそ流れを変えられるのです。ここで、自身の状態を変えるための効果的な方法を2つ提案します。
①自分の思考、感情を実況中継する
自分の思考や感じていることを、実況中継してみましょう。心に浮かぶ思考や感情を、そのまま言葉にします。
- 私は嬉しいんだな
- 私は悲しいんだな
- 私は恐いんだな
- 私はこう考えているんだな
口に出したり心の中でつぶやき「○」をつけて、文章を簡潔させるのがポイントです。
すると、それまでいかに「この感情は良くない」「この思考は無しにしよう」と、自分の気持ちを評価してきたことに気づけるでしょう。あなたが気づいたのは、自分を守ろうとする脳の自動反応です。
人は脳の自動反応に助けられてもきました。しかし同時に、本来のエゴが見失いやすい原因にもなっていたのです。まずは、思考や感情を実況中継し、できる限り本来の自分の声に気づくこと。それが、蓋をしてきたエゴとの関係性を開く第一歩になります。
②1日1分の呼吸法や瞑想を始める
本来のエゴに対し、自動で反応する脳。私たちの命には、自動反応が働く性質が備わっています。だからこそ、心や身体を変えようと思ったら、思考以外のアプローチが有効です。
例えば、マインドフルネス呼吸法です。マインドフルネス呼吸法には、呼吸に意識を向けることで、分泌されるホルモンや自律神経、脳の回路を変える効果があります。近年、1日数分のマインドフルネス呼吸法でも自身の心や身体の状態が良好になることが、脳科学の実験結果として発表されました。マインドフルネス呼吸法のやり方は以下の通りです。
- 楽な姿勢をとります
- 目を閉じます
- 口をすぼめて、息を細く長く吐きます
- 口を閉じます。すると、鼻から大気が身体に入ってきます
- 3と4とに意識を集中させます
呼吸以外のことが浮かんだら、淡々と意識を呼吸に戻します。身体からのアプローチは、短時間でいいので毎日続けることが、効果を上げる為の最大のポイントです。脳は繰り返される動作に信頼を寄せるようになります。
エゴについて知る:まとめ

あまり良くない意味で使われる「エゴ」ですが、実際はあなたの幸せな人生の為の味方です。そして、あなたが望めば「エゴ」との関係性を、変えることもできます。エゴとの信頼関係を築いていけば、安心感ある毎日が待っていることでしょう。そのためには、ここで紹介した『気持ちの実況』や『マインドフルネス呼吸法』をあなたの生活に取り入れてみてください。