アスペルガー症候群は発達障害の一種です。コミュニケーションや想像力の障害と言われています。現在の診断名は「自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症(ASD)」です。では、自閉症スペクトラム障害とアスペルガー症候群との違いはどのようなものでしょうか?
今あなたが困っているのなら、原因はアスペルガー症候群だからかもしれません。今回は、心の専門家である臨床心理士がアスペルガー症候群のチェック方法を解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害)とは発達障害の一種です。「社会性(対人関係)」「コミュニケーション」「想像力」の3つの障害を持つと言われています。3つの障害は生まれ持った先天的なものであり、育て方などによる後天的なものではありません。
- 社会性(対人関係)の障害:他者と親密な関係を作ることなど
- コミュニケーションの障害:曖昧なコミュニケーションや想像して動くことが苦手など
- 想像力の障害:場の空気を読むことや他人の気持ちを汲み取ることが苦手など
先述したように、現在の診断名(※)は「自閉症スペクトラム障害」です。この「スペクトラム」にはそれぞれが曖昧な境界を持ち、連続しているという意味があります。「自閉症スペクトラム障害」のなかにアスペルガー症候群や自閉症が含まれているのです。
※正式名称
DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引):自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症
ICD-11(国際疾病分類):自閉スペクトラム症
アスペルガー症候群と自閉症の違い
では、アスペルガー症候群と自閉症の違いはなんでしょうか。DSM-Ⅳ(旧分類)の分類基準がとてもわかりやすいので紹介します。
- アスペルガー症候群:知的能力が正常の範囲以上で、言語発達に遅れのない、コミュニケーションが苦手な場合もある
- 自閉症:言語発達や知的能力の遅れがあり、コミュニケーションもかなり苦手
言語発達の遅れと知的能力の程度が大きな違いです。アスペルガー症候群は言語発達に遅れがないことから、軽度~中等度の場合は大人になってから気が付くこともあると言われています。
次の項目で「社会性(対人関係)」「コミュニケーション」「想像力」の苦手さとはどのようなものか、わかりやすく解説します。
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)チェック

診断基準は難しいことばかりです。簡単にいうと、これから紹介する症状が(気が付かなくても)幼児期から症状が存在していることや、症状のせいで社会的に困ることがあると「アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害)」と診断されます。この項目では、よくある困りごとをリストにしてみました。
こんなことに困っていたらアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)かも?
- 場の空気を読むことが苦手
- 相手の気持ちや意図を想像することが苦手
- 臨機応変に対応することが難しい
- 言葉遣いや言葉のチョイス、抑揚などが独特
- お世辞やジョークがわからないことがある
- こだわりを持った興味関心ごとがある
- 複数の人たちの会話に入りにくい
- 曖昧な説明や指示を理解することが苦手
- 人の話に共感しにくいことが多くある
- 他人への興味がほとんどない
- 一人で過ごすことが好き
- ルーティンなど決まった行動や予定の変更にパニくる
- ルールに忠実すぎる、ルールにこだわりを持つ
- 感覚過敏もしくは鈍感(寒暖差や痛みなど)
- 同じような動作・行動を繰り返す
- 興味のないものは関心が持ちにくい
- 視線を合わせることや、身振り、顔の表情の理解に困難がある
- 社会的状況に合わせて、行動を調整するなど、文脈を読むことに困難がある
- 著しい偏食がある(同じものばかり好む、好き嫌いが激しいなど)
- 知的能力や言語発達に著しい遅れはない
2、3歳~小学生くらいまでの子どもの場合は、以下のような傾向もあります。
- 目が合わない
- 名前を呼んでも反応がない
- くるくる回るものを好む
- ごっこ遊びよりも一人遊びが多い
これらすべてに当てはまらなくても、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されることはあります。医療機関では、医師の問診や臨床心理士などによる心理検査などを合わせて診断します。
また、幼少期のことも医師や臨床心理士は伺います。発達障害は先天性のため、成人以上になってから急に症状が出た場合は、ほかの精神疾患の可能性があるからです。
似ている障害・併発しやすい障害

アスペルガー症候群は、完治する障害ではありません。しかし、上手く付き合うことで困りごとを減らすことはできます。そのためにも障害や症状をよく知ること、それらに合う対応が大切です。この項目では、似ているもしくは併発する障害を解説します。
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と似ている、もしくは併発しやすい障害の代表例は以下の4つです。
ADHD(注意欠陥多動性障害)
切り替えが苦手、居眠りが多い、落ち着きがない、不器用、覚えることが苦手、忘れ物や無くし物が多い、時間を守ることが苦手など、これらの症状が6か月以上続くこと。ASDと似ている症状もあり、DSM-5の基準からは併発する障害とも言われています。
LD(限局性学習障害)
聞く、話す、読む、計算する、推論するなどのうち特定のものの習得が著しく苦手であること。視覚障害や聴覚障害などが直接的な原因ではない障害です。
てんかん
発達障害と併発しやすい障害。てんかんは突然意識を失う「てんかん発作」を繰り返します。多くの場合は知的障害を伴っていると言われます。
うつ病
発達障害と併発しやすい障害。うつ病の解説は省略しますが、発達障害の影響でうつ病や不安障害になることがあります。それは、周りから症状が理解されにくく、孤立することがあるからです。
また、社会的コミュニケーション障害も自閉症スペクトラム障害と似ている障害と言われています。ほかにもHSP(Highly Sensitive Person)という気質もASDと似ていると言われ、HSPの気質をもつ発達障害の人もいます。気になる方は病院に受診もしくは、診断名は出せませんが悩みを相談する場としてカウンセリングもオススメです。
得意分野を伸ばそう

ASDのチェック項目には「苦手」という言葉が多かったでしょう。しかしASDの人にも得意なことはあります。
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)の人は、物事を納得できるまで実行することやルールを厳格に守ることが得意です。チームよりも個人プレイの方が能力を発揮できるタイプ。また、独創的な視点を持っていることから、技術職や芸術家、研究職やwebデザイナー、webライターなどに向いていると言われています。
たとえば、ASDと公表した有名人には、シンガーソングライターの米津玄師さん、モデルの栗原類さん、作家の市川拓司さんなどがいらっしゃいます。皆さん、基本的にお一人で活躍されています。
アスペルガー症候群の人は人間関係のトラブルなどから自己肯定感が低くなりやすいので、自分の得意なところを伸ばすことを意識してみましょう。