どんなに頑張っても、どんなに周りから評価をされたとしても、いつも自分をなかなか認めることができなかったり、「自分には価値がない」と強く感じたり、不安な気持ちを常に抱いていたり、なんだか生きづらさを常に抱えている……。
もしかしたら、アダルトチルドレンかもしれません。アダルトチルドレンの傾向を持つ人の中には、苦しさを漠然としか認識できていないケースとても多く見られます。今回はアダルトチルドレンの状態になる原因と特徴を解説します。
アダルトチルドレンとは

アダルトチルドレン(以下AC)とは、『今現在の自分の生きづらさが、親や家族との関係によると考えられる状態』を指す概念です。
もともとACの概念は、1983年に機能不全家族に関するセラピーの第一人者、ジャネット・ウォイティツの著書がミリオンセラーになったことで広く知られるようになりました。
はじめは、“アルコール依存症の親と共依存の配偶者に育てられた子どもたち”を指す用語でしたが、現在はアルコール依存症のみならず、身体的・精神的・性的な虐待があった機能不全家族で育った子どもたちも含めてACと呼ばれています。
アダルトチルドレンは機能不全家族を生き抜いたサバイバー

機能不全家族、という言葉も初めて聞いた方も多いかもしれません。機能不全家族とは、本来安全で心のよりどころであるはずの家庭がその機能を十分に備えていない家庭のことを指します。
背景にはアルコール依存やギャンブル依存症であるケースだけでなく、虐待や育児放棄、家族に疾患がある場合など、さまざまなケースが見られます。
しかし必ずしも機能不全家族の状態が、外から見ても問題がある家族であるとも限りません。はたから見ると普通の家庭にしか見えないのに、機能不全となっているケースも実に多いのです。
本人が問題を認識していないケースも多い

そして、AC本人も大人になるまでその問題や苦しさの根源に気付かないことがあります。親から身体的・精神的なサポートを十分に得られず、むしろ肉体的、精神的、性的な虐待を受けたことにより、情緒の発達の機会を妨げられて育ちました。
このような幼少期の体験から以下のような悪影響を及ぼします。
- 自分のことを大切だと思えない
- 偏った考え方や強いこだわりから抜け出せない
- 人間関係をうまく築けない
- 痛みの感覚を感じにくい
- 罪悪感や自責の念に苛まれる
- 頑張りすぎるなと言われても自分の限界がわからずやり過ぎてしまう
ですが、このような苦しさを抱くようになったのはACの人が悪いわけではありません。むしろ、機能不全家族という過酷な環境をなんとか生き延びるために、“生きる術”を身につけたサバイバーなのです。
つまり、そうしなければ生きてこられなかった環境を生き延びたとても逞しい生存者なのです。では、実際にあなた自身がACかどうかを知るヒントとして、チェックリストを使用して解説します。
もしかしてアダルトチルドレン?チェックリスト

実際にあなたの生きづらさはアダルトチルドレンとして現れているか、チェックリストを使用して確認してみましょう。※1
- □物事を最後までやり遂げることが難しい
- □自分に自信がない、自分はダメな人間だと思う
- □自分に対して過酷な批判をする
- □自分は生きている価値がないと思う
- □人生を楽しむことが下手である
- □他人と親密な人間関係をもてない
- □白黒をはっきりさせないと気がすまない
- □何かあると反射的に反応する。または何の反応もしない
- □必要のないときにも、つい嘘をついたり、ごまかしたりしてしまう
- □必要以上に相手に忠実である
- □何が正常で何が異常かわからない
- □他人からの褒め言葉を受け入れにくい
- □他人に助けを求めるのが下手である
- □自分は他人とは違う感じで、居場所がなく、孤独だと感じる
- □自分でコントロールできない状況がおきるとパニックになる
- □他人から認められたいという気持ちが強い
- □理由もないのに頭痛や腹痛などがあり、常に疲労感がある
- □摂食障害(拒食、過食、過食嘔吐など)を起こしている
- □アルコールや薬物(医師の処方による睡眠薬や精神安定剤など含む)の依存症になっている
- □非行に走ったり、自暴自棄になってあばれる
- □お茶目で他人の気をそらす
- □帰るときは、目立たないようにスーッと消える
- □生真面目で他人の言うとおりにする
- □いつもせかせかと衝動的に行動する
- □何か悪いことが起こるのではないかと、常に恐れている
- □他人の目が気になる。被害妄想に陥りやすい
- □完璧主義者である
- □顔の表情が乏しい。ボディーランゲージがない
- □変化や新しいことに対する怖れが強い
- □抑うつ状態に陥る
- □自分が自分でないように感じることがある
- □自分の感情がわからない。ある種の感情を感じることができない
- □怒りが爆発したり、いつもイライラしている
- □権威のある人の前に立つと過剰に萎縮する
- □記憶が鈍ったり、逆にイヤな記憶に悩まされて胸が痛んだり、悪夢を見たりする
- □コミュニケーションの技術に乏しい。友人をつくるのが下手
- □自分はいったいどんな人間なのかわからず、自己が確立していない
- □対人恐怖があったり、引きこもりをしている
- □共依存的な行動に出やすい
10個以上当てはまると、アダルトチルドレンの可能性があります。
再度お伝えしなければいけないのは、アダルトチルドレンは医学用語ではなく、そのような障害名もありません。ですが、あなたの生きづらさの根本には親や家族との関係による影響があるかもしれない、と気づくことは生きづらさの解消のための一歩にもなります。
生きづらさを手放したい方におすすめの対処法

自分がACかもしれない、ということに複雑な感情を抱くこともあるかもしれません。ですが、大人になった今、あなたはすでに機能不全家族の環境を生き延びて独り立ちした大人です。ですから、今のあなたの人生を大切にする権利があることを忘れないでください。
「自分の人生を大切にする、自分を大切にする、という感覚がわからない」方は、カウンセリングルームや、オンラインカウンセリングなどで一度カウンセリングを受けてみることもひとつの方法です。
また、一人でも取り組める方法は「自分を大切にする練習をする」ことです。たとえば、マインドフルネスを日々取り組み「あるがままを受け止める」ことも有効です。マインドフルネスのやり方に関しては下記の記事が参考になります。

アダルトチルドレンの診断:まとめ

マインドフルネスの他には、近年注目されている「セルフ・コンパッション」のワークもおすすめです。セルフ・コンパッションとは、”自分を思いやる力”を育むワークです。生きづらさを手放す権利を取り戻すために、できることから取り入れてみてくださいね。
引用文献※1 西尾和美(著)学陽書房「アダルト・チルドレン 癒しのワークブック―本当の自分を取りもどす16の方法」
参考文献:信田 さよ子 (著)ヒューマンフィールドワークス『アダルト・チルドレン:自己責任の罠を抜けだし、私の人生を取り戻す』