コロナ禍による未知のものへの怖れや、将来への不安によって心の安定やストレス解消を重要視する方々が増えました。以前は瞑想を敬遠していた方も多くいましたが、瞑想への抵抗感は薄れつつあるようです。そこで瞑想に興味を持ち始めた方に向けて、どのくらいの時間をかければ瞑想・マインドフルネスの効果が出るのか、説明します。
瞑想の効果 ―瞑想の種類と効果―

瞑想の種類は1,000種類以上とも言われています。その9割はリラクゼーションを目的としたものが多く、祈りを含んだ有神論的なものから非有神論的なものまで多種多様です。
瞑想の種類、目的によって多少の効果の違いがありますが、厚生労働省が瞑想の疾患への効果をエビデンスに基づいて紹介しています。
- 血圧の降下
- 過敏性腸症候群の症状の緩和
- 不安感の改善
- 抑うつ感の改善
- 不眠の改善
瞑想のなかでも宗教色を排除し、親しみやすい瞑想法として知られるのがマインドフルネス瞑想です。マインドフルネス瞑想は、科学的な研究により多くの効果が証明されています。
集中瞑想の種類と効果
マインドフルネス瞑想の基本となる集中瞑想には、呼吸瞑想、キャンドル瞑想、音の集中瞑想、ハミング瞑想、歩く瞑想などがあり、主に以下のような効果があげられます。
- 集中力の向上
- 注意制御力の向上
- 意志力・判断力の向上
- 過剰な執着心がなくなる
- 記憶力の向上
- 心の安定・平穏
特定の対象物に意識を向け続ける集中瞑想は、対象物から意識が離れたら、また対象物に意識を戻すという繰り返しを行います。
集中する力が増し、心の揺れ動きや周囲の状況などに翻弄されることが少なくなり、今自分が何をするべきかが明確に理解できます。意志力や判断力が向上し、心の安定感が増していくのです。
依存への効果も
また、思考や感情などに執着しすぎず手放す力が養われます。たとえば、たばこやお酒などへの依存的な傾向が減る、嫌な思い出などを反芻し自分を苦しめるなど、過剰な執着心による悩みが減少していくでしょう。
さらにマインドフルネス瞑想の実践を積み重ねることにより、脳内の海馬にある学習や記憶などを司る灰白質の容積が密集し増大することが証明されます。記憶障害や認知障害の防止なども期待されているようです。
観察瞑想の種類と効果

マインドフルネス瞑想では、まず基本の集中瞑想で集中力を養います。その集中力を使って「今、この瞬間に起きていることをありのまま気づく力=観察力」を養うのです。
観察瞑想の種類には、ジャーナリング(書く瞑想)、ラベリング瞑想、ボディスキャン瞑想、オープンモニタリング瞑想などがあり、効果には以下のようなものがあげられます。
- 観察力の向上
- 自己洞察力の向上
- 客観的な視点が育まれる
- 自分の感情をコントロールする力(感情調整力)の向上
様々な観察瞑想の実践により、自分の心や身体に何が起きているか観察する力が育まれます。客観的な視点や自己洞察力が培われ、自分の感情をより早く認識し、その感情を調節できるのです。
イライラへの効果も
例えばイライラした際にも感情的に行動することが減り、結果的により良い人間関係にもつながるでしょう。
脳科学の視点からも、普段活動していない脳の部位に血液が送られ低下している脳の働きが活性化することが分かっています。脳の「島」という情動調節などに関わる部位の厚みが増し、思考や感情を理解する力が高まることで自己コントロール能力が向上するのです。
共感力を高める瞑想の種類と効果
集中瞑想や観察瞑想を下支えする役割を持つ瞑想法には、慈悲の瞑想、感謝の瞑想、共感瞑想などがあります。効果は以下のようなものです。
- 自分や他者への思いやりの心が育まれる
- 共感力の向上
- 人間関係の改善
- 幸福を感じる力が高まる
- ストレスの低減
慈悲の瞑想などの実践により、今まで培ってきた価値観や固定観念を手放します。すると、過度な自己批判がなくなり、自分のありのままを受け容れる心が育まれるのです。
他者への共感や思いやりの心が培われ、自分や他者との関係性が変われば、人生への満足感が増して今ある幸福に気づく力が育まれます。
仕事のパフォーマンスも向上
また、脳の背内側前頭野が活性化すると、意識・注意を集中する力、記憶をコントロールする力なども向上します。他者とのコミュニケーションをおこなう、行動の抑制や感情を制御するなどの精神活動にも効果があるようです。
すると、自他の感情を理解し、自分を上手に表現しながら社会により適応できるようになるでしょう。より良い仕事やパフォーマンスの向上、人間関係の改善などにつながります。
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瞑想の効果が出るまでの時間

筋力トレーニングやダイエットなどと同じように、瞑想も1日で効果が出るものではありません。
マインドフルネス瞑想は「脳の筋トレ」とも呼ばれています。実践の積み重ねが重要なことは言うまでもありません。欧米での脳科学研究の分野では、瞑想の効果が出るまでに8週間の継続が必要と結果が示されています。
また、日本企業のマインドフルネス瞑想実践者へのアンケート結果によれば、4週間で半数程の人が、8週間で約85%の人が効果を実感しているデータが公表されています。
その実感した効果は約半数以上の人がストレスの軽減・解消や不安などの感情を調節する力の向上、そして心の平穏が上位となっています。
それゆえ、瞑想の効果が出る目安として4週間~8週間以上の継続が重要と言えるでしょう。まずは日々の暮らしのちょっとしたすき間時間に、数分程度から瞑想を取り入れてみてください。瞑想の継続により、日々のストレスを解消し、心の平穏や内なる幸福を築くことができますよう心から願っています。